その祈りは、とても細く硬い針のように振れて、きっと何者もきずつけることはない/ねことら
 



あなたに追いつきたい。確定させたい。
素肌や、くちびるや、往来の熱のこと。
恋のはなしだ。
わたしは、いつも恋のはなしばかりしている。


嵐のように荒れて、きみが部屋を出たあと
ふたりぶんのコーヒーを淹れて
まだ帰りを待っている。


うすい左胸のふくらみから、少しずれた部分がいたむ。
なにか、大切なものが外れたような感覚があって。
月のわずかな光量で部屋が照らされている。
おとはしない。


もしかしたら、わたしのやりかたは
弔いの方法にちかいのかもしれない。
ひとをすきになるのは、命をひとつすてることだ。
わたしの、その瞬間の命は、もう

[次のページ]
戻る   Point(5)