暁のエクスタシー ★/atsuchan69
ころよ」
そう言って、外されたブラウスのボタンを不安げに弄りはじめる
「ふーん。じゃあ、とにかく街まで帰ろう」
「いいえ。まずブラジャーを取りに行かないと‥‥」
細身の女は、果てのない海のどこかを見つめると、
ふたたび愛のない捨てられた人形の顔をした
「あ、ミサイルの飛行距離って?」
ふたたび海辺へと向かう彼女を足早に追いかけて私は訊いた
「たいして飛ばないと思う。だから、はやくブラジャーをつけないと」
「え?」
とつぜん、薄闇の空が真昼のように明るくなった
何かが生まれたことを告げる雷にも似た声が、そのすぐ後に全天に轟くと
世界中の「捨てられた人形」たちが、
たった今、輝かしい胸に蒼褪めた色のブラジャーをつけて
両腕を通したブラウスを堂々と大きく開き、
「主よ、来たりませ」
と、それぞれの言葉でしっかり呟くと
私と、肉眼で見えているこの古びた不確かな場所とを道連れに、
やがて始まろうとする深刻で悲惨な朝を迎えることなく
すべてを、一瞬で消滅させた。
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