初夏/壮佑
 

葉陰で誰かの声がしたので
覗いてみても誰もいない
代わりに鈴なりの実を見つけた
表面にぶつぶつがあった

郵便局からの帰り道
ケヤキの下を通り過ぎるとき
笑い声が聴こえて来たから
見上げてみても誰もいない
青空に向かって分かれた太い幹
葉っぱがぎざぎざしていた

ハンバーガー店への道すがら
初夏のイチョウの群葉は
こんなに鮮やかな緑色だったのか
葉っぱの裏から出て来た小人が
みんなでせっせと作業をしている
振り向いたらサッと引っ込んだ

バスターミナルの近くの
クスノキの葉叢が風に揺れている
てっぺんの梢の彼方から現れた
ジェット機雲を眺めていたら
木陰で佇んでいた懐かしい人を
うっかり見逃してしまった





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