山を歩けば/蒲生万寿
 
空の中に空を見る
木の中に木を見る
花の中に花を見る

一足一足歩みゆく土の上
私の体内に
風が吹き抜け
喜びが生じる

坂を登る辛さにも楽しみがあり
岩を下る怖さにもそれを越えた満足がある

野性が生きる場所で
回りを固めなければ生きられない腑抜けた脳ミソが
汗だくになりながら
奮闘する

愚かな生き方ですっかり強張った魂が
内からの冷や汗と外への立小便で洗い流され
居心地の良い自分が表れる

遠くの山並みを眺め
「どうだい、同じ目線だぜ。いや、オレの方がちったぁ高ぇか!」

驕りも許容される深い懐で納得を覚える

小さいならその小ささで
大きいならその大きさで
そこにあるものを捉えれば
至る処に微笑みは訪れる

それはとても素直なもの

私の中に私を見るような
山の中で山を見るような

無意識に知っている
ど真ん中にいる一つのもの

そう私も
同様に世界も


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