音に棲む/石川敬大
 



   水々の声をきいたことがある


   うめきに似た
   くるしげな
   声にならない
   声になるまえのだれかの


   花々の声をきいたことがある


   耳なりかもしれなかった
   虚空にあるひとの高さで電線がなっていた
   地虫かともおもったが
   おさないぼくが耳のなかで泣きつづけていたのかもしれなかった
   あの初秋の蝉のせつなさで


        *


   かたい鍵盤を跳ね
   五線譜の鉄路をゆくと
   姿をなくしても列車の音は走りつづけた
   寒い荒波をまえにした海岸で
   キリの
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