すいかにまつわるエトセトラ/そらの珊瑚
 
い恋をしている
恋なんて
人を幸せにはしてくれない代物だとわかっていても
してしまうのが、恋

つわりは病気じゃないと
おばあちゃんに言われて
辛かったのよ
と母が言う
あの時ほど
母にシンパシーを感じたことはない
きっと殺意に似たものを
感じたに違いない
日常に潜む殺意のどれほどが実行されるのか知らないが
(愛、自由、平等の図式が崩れた時に
 事件は起こるのではないかというのは
 あたしの個人的見解)
命をふたつ抱えた妊婦が
聖母マリアのように慈悲深いとは
男の幻想である

今年もハウスものの
すいかが出回る季節になった
百果繚乱、わがまま女の童話は日本でも続く

あの時に
食べたすいかほど
美味しいすいかには
これから先も
巡り合えそうにないけど
それでいい
もう
恋なんてしないと
決めたからである



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