白いバトン/そらの珊瑚
 
の女の人が
近寄り
「大丈夫ですか?」
と声を掛けた
手にした白いハンカチを差し出しながら

私は自分自身をとても恥じた
今、一番辛い気持ちでいる人のことを
思いやれなかった
未熟な自分を
そして
その白さを
貴いと思った
名も知らぬ
顔さえ覚えていない
その女の人の行動を
ちゃんと覚えていようと思った
たぶんそこに居合わせた人は
同じように
感じていたのではないかと思う

人と人が
継いでゆくものは
DNAだけではなく
カタチはないけれど
大切なものがあると
教えられた

あれから
何十年も
時は過ぎたけれど
あの
白いハンカチを
私はちゃんと
継いでこれただろうか
そしてまた
見知らぬ誰かに
継いでいくことが
できたらいいなと思う





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