白いバトン/そらの珊瑚
時々
あの白いハンカチを思い出す
あたかも
そうすることが
シナリオで
決まっていたかのように
差し出された
それを
いまでも
鮮やかに
思い出す
私は
電車通学をする
女子高生だった
いつものように
電車はぎゅうぎゅう詰めではないにしろ
空いてもいなかった
吊革につかまり
友達と
他愛のない
おしゃべりをしていたら
すぐ近くに立っていた
男子高校生が
突然うずくまり吐いた
吐瀉物が
しぶきをあげながら
床に輪を描いて広がっていく
とっさに私は
「きゃっ」と
言ったような気がする
一歩後じさった気がする
すると
OL風の女
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