無題(薄くれない色の闇のなか〜)/カワグチタケシ
 
薄くれない色の闇のなか僕たちは
とても長い距離を歩いた
想像がつかないくらい
遠くまで僕たちは歩いた
あまい風
あまいメロディ
やわらかい音が生まれるときの
秘密を左手に握りしめて
小さなめまいを右手に感じながら
草原を踏んでどこまでも歩いた
ディストーション 突然の雨
突然の雨が捨てられた雑誌の頁を染める
そのとき僕たちは
季節が終わる小さな音を聞く

ハニー、新しい季節が
目を伏せて近づいてくるよ
やわらかいハンマーがアスファルトを叩く
女の子たちはまだ気づかずにはしゃいでいる
川を渡ってきた風が彼女たちの髪を撫でる
友だちは草原に寝転がって星を見上げて
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