生者の行進/山中 烏流
 



まるで、舌なめずりのように生きた彼女は
東京の隅の方に好んで住んだ

茶色くて背の高いルームランプと
うぐいす色のカーテンの側で
彼女の歌に返るものは
目の前の壁が、低く唸る声だけだった


朝食は決まってパン
パンのない日は一日中を家の中で過ごした
一年に一度だけなら、その他でも許された

薄く濁った
もう、何度目か分からないティーバッグの水を切って
かじかんだつま先が足踏みをする

今、何時だったかしら

彼女の呟きに、世界中の時計が耳を傾けてその針を揺らす
足早に過ぎる季節を見て
その部屋の鍵は一つ、また一つと増えていく


玄関の
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