鉄道自殺/シホ.N
きのうの夕暮れ
この町の小さな駅の
ラッシュ・アワア時
飛び込みがあった、若い人の
その事
脳裡よぎりもしないまま
線路したの
花咲く春の道を
今日の真昼
走り抜けていたわけで
いまは夜のイメエジが走る
見えない音が走って去って
すでに血もかわいた
赤茶けた線路の上を
車輪が影をからませ疾走して
死のごとき影はからんで疾走する
つめたく鉄の
あついレエル
やがて白日が影を洗う、日常のために
缶詰状のこの部屋にも届く
とおい列車の音
見えない金属質の疾走者
夜の空気つらぬき
いま真夜中の脳裡をもつらぬき痛める
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