不読の秋/浩一
この頃は本は読まない
特別の主義や信念があってのはなしではなくて
ただソノキニナラナイ
ただそれだけ
それだけのはなし
残ったものは少しのエッセンス
と その他は全部ナンセンス
なんて
戯れの韻を踏んだりしても
あの頃の友達の声と
あの頃のあの娘の瞳は
もう二度とかえってこない
<学んだことはすべて
ありふれた理由で砕けて散った>
なんて
ありふれた感傷に耽っていたら
むかしの大学教授から
よく分からない
長い手紙が届いた
「リビドーの衰退とともに
知的好奇心も減退する」
分かるひとには分かるだろうが
それはまったくの真実だったので
礼儀としての返事は出さずにおいた
特別の主義や信念があってのはなしではなくて
ただソノキニナラナイ
ただそれだけ
それだけのはなし
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