春のうた/服部 剛
 
町の喧騒の外れで
川のほとりに佇み 
一台の車が、風を切って 
傍らの道を通り過ぎた 

ふと、耳にした水の音に 
下の方、下の方へと 
へりくだってゆく 
水のすがたを思う 

長い冬を越え、ようやく訪れた 
春の日射しをそそがれて 
ひらき始めた 
川の両岸の桜並木に 

何処までもへりくだってゆく 
川の音が 
遥かな水面で瞬くひかりの音符となり 
春をうたっている 







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