旅/
シホ.N
「旅人よ
うしろには
できたばかりの
道がある」
道はあるけれど
道は何も語らない
歩いてきた道を
ふり返って見つめたりはしない
つぎの一歩をふみだすたびに
その前の一歩は
荒野のなかにうずもれていく
旅人よ
うしろには
なんの思想ももたない
地平線が一本
旅人には
ちょっとした過去があり
困難をはらんだ未来があり
そして
そんな過去も未来も吹きとばす
強烈な
現在の一秒一秒が
重く落下し
軽やかに流れ
意味ありげにせん光を放つ
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