ひとりの木 /
服部 剛
僕の前に、一つの丸い窓がある。
春の嵐にずぶ濡れて
身を撓(しな)らせながら、葉をきらめかせ
必死の思いで立っている
ひとりの木
それは今夜も
世界の何処かで萎(な)えそうな
君の心の闇を見せる
ひとりの木
手の届かない窓越しで
只、突っ立っている僕は
(折れるなよ・・・)と呟いた
丸い窓越しに立つ、ひとりの木は
明日の雲間から射す日を全身にあびるだろう
諸手(もろ)をあげて天を讃える人のように
歓びの枝を無数にひろげて
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