ゆっくりとうつりかわっていく季節/影山影司
転がっていた。仕事柄ペンを使うので、胸ポケットから落ちたのかと思って拾ったが、自分が普段使っているものはいつも通りポケットに挿してあった。誰かがよく似たものを落としたのだろうか。どちらにせよ、大して高価なものでもない。俺はそのままペンを懐に入れて会社へと向かった。
そして次の日のことだ。会社から帰ってくると、今度は名札が落ちていた。胸にピンで止めるタイプのもので、モノトーンのプラスチック製。俺の名前が彫られているが、微妙に書体や材質が違う。そして色合いがややピンクがかったものになっている。何かのいたずらだろうか。少なくとも、俺はそんなものを一度も使ったことがなかった。その日は疲れていたのもあっ
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