ゆっくりとうつりかわっていく季節/影山影司
結論から語ると、俺は今、死体を分解している。電灯の暖色を受けて朱く色づいたバスタブの上に、赤黒い血が流れ出る。通りの悪くなったナイフを、力任せに叩きつけると予想以上に大きな音がして、慌てて蛇口を捻る。気を付けないと周囲に住む人間から怪しまれるかもしれない。換気扇から、俺の泣き言さえも漏れているような気がするのだ。水流の響きに耳を澄ますと、少しだけ気分が落ち着いた。冷水の飛沫が、なんとか逃れようと飛び散った血痕へと襲いかかり、暗い排水口へと拉致してしまう。俺はこの男のことを何も知らない。俺が殺した訳でもない。
始まりから話そう。
その日の朝、俺が家の鍵を閉めていると足元にペンが転が
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