長島三芳さんを偲ぶ ー画廊喫茶ラバン・アジルにてー /服部 剛
 
画廊喫茶ラバン・アジルに 
人生の四季を旅してきた詩人は集い 
Jazzの流れる店内は 
セピア色の電球に照らされ 

白髪の詩人達は 
在りし日の詩人の魂と 
いくつもの思い出を語らい 
夕陽が海に沈む頃 
店のドアから出ていった 

ひとり残った僕に、髭のマスターは語り出す 
「店の名は兎が跳ねるっていう意味でね、 
 無名の頃のピカソやユトリロが夢を語り 
 会話をはずませた店もラバン・アジルで・・・」 

Jazzの流れる無人の店で 
グラスと酒の片づいたテーブルに 
僕は頬杖つきながら 
在りし日の詩人の面影を 
先ほどまで語らっていた 
夢の余韻に浸っている 

やがてウイスキーの酔いも覚め 
素面(しらふ)の右手は、ペンを取る 

在りし日の詩人が 
人生の出口の闇を見据えながら 
夏の向日葵に心を重ね 
生の決意を語る詩を  
セピア色に照らされた原稿用紙に 
僕は綴り始めた 




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