夜間列車/伊織
ハロー、ハロー
そちらは元気ですか
私はといえば
ひりひりと喉に張り付く甘い痛みが
まだ 消えません
最後の一言を言わずに
ただたゆたっていたのは
まだどこかで通じ合っているかのような
この先互いに旅に出ることなどないかのような
確信にすがっていたのです
言わないことで
こうして
夜の波に揺られながら
この瞬間も
延々と繋がっていられるのです
バニラ味の豆乳を買いました
おおよそこの時間には飲むことのない味覚です
どうか
この一日が
この夜が
終わりを迎えるのだとしても
振り返らずに手を振ったあなたは
思い出とは違う場所で
人混みを視線で追わなかった私に
少しだけ、
心で寄り添っていて欲しいのです
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