【 ノスタルジック 】/泡沫恋歌
 



いつの間にか
遠くまで来てしまったと
振り返ってみたら

 ――そこは知らない街だった

懐かしい駄菓子屋さんがあった
買ったばかりのお菓子を
口にくわえた子どもたちが
お店の前でメンコや縄とびをして
賑やかに遊んでいる

夕暮れが近づくと
遠くの方からお豆腐屋さんの
プオォー プオォー
どこか調子外れな
ラッパの音が聴こえてくる

遊び疲れて帰る道すがら
家々の軒からは
夕餉の匂いも漂ってきて
あ、カレーライスだ!
こっちの家はすき焼きか? 
いいなぁー

よその家の晩ごはんの
おかずを鼻で当て
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