人はみな歌をもっている/天野茂典
 
 
  ★ 落ちてくるラメ入りの空
  高架線の駅からは
  遠くが見える
  夕方のラッシュ時の
  高校生のおしゃべり
  同じ空に目をくれるものはいない
  みんな街に帰るのだ
  準特急は新宿へ人を運ぶ
  人はみな歌をもっている
  そのサビの部分はなかなか
  ださない
  携帯電話にメールを書き込むように
  自分の歌をうちこみながら
  こころのおくに秘めておくのだ
  駅は歌で満ちている
  声にはだされない
  人々の歌だ
  そのことにまた
  気づいていない人々も多い
  おふろあがりに
  ふっとでかかるが
  それを
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