工場日記1990/浩一
 
労働者はおおむね真面目に労働していたし、じぶんの与えられた作業には真剣に取り組んでいたが、しかし、責任の及ぶ範囲はそこまでで、というのも、それは当然で、最下級の働き手である彼等は、直属の上司に責任を負っても、会社自体には責任を負ってはいなかったし、取引先には無論、なんの責任も負っていなかった。

だから上司には、犬猫のように扱われ、単なる道具、将棋の歩のように動かされても、文句は言えなかった。実際彼等は、いい歳をして、年下の上司に「馬鹿」だの「阿呆」などと平気で罵倒されても、唯々諾々として、彼等に従うしかなかった。「おっつあん、いい加減にせえよ、つまらん失敗ばかりしやがって」などと言われても、
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