時計のない部屋/……とある蛙
しかし、啓示を受けたのだ。山の彼方へ行くように。地平線へ。
俺という人嫌いは
背中にうっすらとした毛が生え
頭部には後光が輝くよう
髪が一部欠落している。
歩き出しの一歩目は眠り
思考ではなく夢を落下させる
漠然とした風景が雑然とした街に変わり
街外れの交差点を東に思念すると
蜘蛛が道先を歩く、
流れる山道が平坦に続く。
語り手不在の時間の流れが
身を浄めることもなく 落下する
絶壁に刻み込まれたごく僅かな膨らみが
真横に植栽された歪みをもつ
断崖の松は意外なほど生き生きしていて
松の樹皮にへばり付いた粘菌が猫に変わる。
記憶の彼
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