辺見庸『眼の海』を読む/石川敬大
 
 詩には詩の体裁があり形式がある。散文詩など例外もあるが、詩とは行分けの韻文であり、韻律を重んじるリズム感や音感をもつ文体のことである。広辞苑で〈詩〉の項をみると「風景、人事など一切の事物について起こった感興や想像などを一種のリズムをもつ形式によって叙述したもの」とある。また〈散文〉とは対立項の〈韻文〉をみると、「詩の形式を有する文。すなわち、単語・文字の配列や音数に一定の規律のあるもの」となっている。したがって詩が詩として成立するには「リズムをもつ形式」をもって「感興や想像など」書き手の主観を「叙述」することこそが必須条件であるらしい。

 なぜわたしが、こんな初歩的なことから書き出さねばな
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