言葉のゆげ /服部 剛
震災から1年の3・11に復興を願い
仙台で行われた朗読会の前
主宰者の南ダイケンさんは
「これ、心ばかりですが・・・」と言い
直筆で「謝礼」と書いた
白い封筒を、僕に手渡した。
夜、一人になったホテルの部屋で
封筒の中をつまんで取り出す一枚の紙から
暖かいゆげが出ていた
それは3年前に僕が都内で主宰していた
「ぽえとりー劇場」に
はるばる仙台からやって来た
ダイケンさんが朗読した時
素朴なラーメンの詩を書いた紙と
彼の訛った言葉から
闇の静寂(しじま)に昇っていた
あの日と同じ、ゆげだった
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