不思議な扉 /服部 剛
 
くに別れる家族があり 
いずれの家族も 
三人なら、永遠(とわ)なる三人 
五人なら、永遠なる五人 
として 
いつか離れれば離れるほど 
僕等の不思議な心は幾重にもかさなり 
いつもともにあるだろう 

  * 

旅の始めに、地元の駅の本屋に寄って 
鞄に入れた一冊の本を、取り出す。 

ランプの灯の下で 
世を去った愛する女(ひと)と 
透明の手を重ねて 
思いを綴る作家の本を 
ぱっと開くと、本は語った。 

「亡き人は、悲愛の扉から訪れる」 







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