過信/森の猫
 

次の瞬間、
目の前にはグレーの斜め縞の歩道があり
潰された蛙のように両手を上げて
突っ伏していた

冷たい衝撃は
転がっている前歯のもの

遠巻きのギャラリーが安否確認をしてくる

状況把握には数十秒で十分だったはずなのに体は固定されたままだ

ふたたび、安否確認の声

ゆっくりと立ち上がり
パンパンと手を払う

大丈夫です

と、声を出してみた


ウォーキングパンプスの先が
わずかにチェーンにひっかかったのだ

軽やかにバンビのように
飛び跳ねていたのは
遥かな記憶だった

ほんの少しの過信が

こんなにもみじめな気持ちと
痛みの続く身体をまねく

最終バス待ちの列に並ぶと
やるせいない涙をこらえる

マンションのドアを開け
リビングにいた夫の背中に
抱きつくと

わんわんと泣いていた



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