旅の夢 /服部 剛
 
旅から帰った若き詩人は 
傷ついた木の机に凭れて 
部屋一杯に射すひかりの中で 
そっと瞳を閉じていた 

思い出すのは 
避暑地で過ごした夏のひと時 
夏空に浮く一艘の舟 
ゆっくり時を奏でる水車 

古びた旅の手帖を捲れば 
ふいに脳裏をよぎるのだ 

人それぞれに 
笑い悩んで織り成す日々は 
いつか何処かへ目を覚ます 
ひとつの夢であるならば―― 







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