石榴/yuko
わたしと、わ
たしの境目が、くっきりと切り分けられて。
細胞のひとつひとつが名付けなおされるとき、
わたしはひどくあやふやな生き物でした。流
れ出る血の沈黙を呑み込んで、平板化する部
屋のなか、つくりものの心臓が分裂し、肥大
していく。幾重にも織り上げられたまなざし
と、太い血管に突き抜かれた位相。
与えられた名前を胸に貼り付けて、右手も
左手も差し出したのは、あなたが好きだった
からではなくて、わたしを否定するあなたが
嫌いだったから。金属の嵌めこまれた指の関
節が、やわらかく腐っていくのを、ただじっ
と見ていた。「あなたは弱いからなにも聞か
なくていい」背中の
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