さまよう針/そらの珊瑚
 
老夫婦の絆ではないのかと
絆とはかくも厄介なものである、と
我慢の限界を超えて
絆を切ってみても
針があれば
縫うことになり、
いずれはもとに戻る、と
思ってしまうから
不思議なものだ


針を数えたか、と
父が言う
だから私は
多くの針を持たないようにしている
一本の針で事足りるのだ
もともと
ひとりに与えられた死は
一度だけと
相場は決まっている


 

  ✽「詩と思想」2012年11月号読者投稿欄・入選作品
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