遥かなり神々の座*/天野茂典
昼下がりの午後
うとうとしながら私は
かがみのなかの真っ白な牛の夢をみていた
牛は顔をこちらに向けて立っていた
弟の絵にそっくりだった 聖なる牛だった
あまりにも純白だったので ぼくはそばに
近づけなかった ぼくはどこに迷い込んだのか
分からなかった 牛にみられながら
行き先を失った私は アンジェイ・ワイダの
フィルムのようにモノクロになっていた
あまりにも牛が美しすぎたので 私は
草をさしだすこともできなかった
インドでは牛は神様である 神聖なのだ
そうか私はインドにいたのか
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