弔い雨/そらの珊瑚
 
雨が降っているのかしら、と
君がつぶやく

君のつぶやきは
答えを求めている時と
そうでない時があるので
それを聞き分けるのが
とても微妙であるけれど
肝心なのは
語尾のニュアンスである
語尾が蝶のはばたきのように
心もとない時は
黙って僕は見送るし
カッコウの囀りのように
饒舌な時は
巣の中の(他人に抱かせた)答えを探してみるのだ

手をかざして
雨の粒を受け止める

雨だね

雨は
こうして
地中に埋まっている
全ての屍体を弔っていく

白い画用紙に
白いクレヨンで
君が雨を描いている
透明のクレヨンが売ってないの、と
君がつぶやく
今度
コートジボワールの画材屋さんで
探してみようと
僕は答える

弔いの絵は
やはり雨のように透明であって
余計な色は邪魔になるのだろう
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