流煙/明楽
 
ベランダに座り込んで
柵の合間から足を出してブラブラ
コドモみたいだな なんて思いながら
いい匂いのする煙草に火を点けた
近くの中学校から聞こえるコーラス
悪くないな なんて思いながら
ふかぁと煙を吐き出した

制服を着て過ごした日々は
時計の針に突きまわされて
いつもどこかに逃げ出したい気分だった
だけど結局
決められた回数だけ文字盤をまわった

あれはチキン・レースみたいだったんだ
脱落したら路頭に迷うって
信じきっていたんだよ
文字盤から落っこちないよう
平気なふりして必死だった
弱気を隠して強気だった
逃げ出したい気分だったのに
そうすることすら怖かったんだ

物思いに耽っている間に
抜け殻になった煙草が流れていった
ふとコーラスが止んだかと思うと
相変わらずのチャイムの音が届いた


文字盤の外にも世界はあるから大丈夫

ひときわ大きく煙草を吸い込んだ
いい匂いの煙と一緒に
誰かのところへ届くように


2006.11.6
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