あれから ー哀しみ/……とある蛙
突然見舞われる不幸は
偉そうなご高説によるものではなく
リアルな現実でしかない。
直面する哀しみは
勿体ぶった芸術作品の中にあるのではなく
喪失したという現実の中にある。
今見ることのできた笑顔を
直後に喪失してしまうことだ。
突然失ったことの現実が
余りに大きすぎると
感情が歪んでしまい
泣くことすら忘れてしまい
言葉を失う。
言葉はきっと魚に食われちまったのだ
言葉はきっと海鳥に喰われちまったのだ
その糞がまだ海岸線から
何キロにもわたって
ばらまかれていた。
日常生活の破片と心が
何キロにもわたって
散乱していた。
今瓦礫の山が堆く積まれた特殊な風景が
潮風に晒されている。
戻る 編 削 Point(12)