それは繰り返すことの美しさに似ていた/中山 マキ
今、私の目の前に存在するネジを巻いたら
昨日西永福の駅で私に舌打ちをした中年と
再び会えるのだろうか。
もしそれが叶うのであれば
私は迷うことなくネジを巻いて
その中年の右頬目掛けて拳を振り上げ
周囲の人間が振り返る前に
またネジを巻き戻して今の世界に戻ってくるよ。
復讐は色とりどりで
器用に人間を駄目にするけれど
とても甘美ということを皆知ってる。
嗚呼、だけれどどれだけの人々の精神世界で
私は罵倒され、握りつぶされているのだろう。
ひたすら歩き続ける井の頭通りを
浜田山の境を僅かに逸れて
僕と君の違いってやつを
セレブリティという
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)