10年だな/mizunomadoka
捕食みたいに。
だからせめてひとりくらいは味方になってもいいだろうと
昨日のうちに逃げるのを手伝うことにした。時間もタクシーもメタファーにして。
看護部長はそのことに気づいてるけど、まあ俺の母親だからしょうがないというか
彼女できみが搬送されてきたときの俺とスーパーでの俺を見てたからな。
リアルストーカーみたいに。
救急出口から霊安室を抜けて
雪の中ストレッチャーのきみを死体みたいに運び出したとき
やっとハンカチのお返しができたねなんて言ったら恥ずいことになるって
わかってたけど真夜中だしクリスマスだしと言ってみたら「おぼえてるよー」なんて
微笑むきみが悲しかったけど、百錬自得の自業自得の極みだった。
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