Michigan/mizunomadoka
 
ミシガン

叔父がテーブルのオレンジを
見つめたまま
わたしに話しかける
「種のない実をつける木を見たことがあるか?」

わたしは首をふる
気の利いた答えを
期待されてるわけではないことを
知ってるから

「その木が、お前の母親だと想像してみればいい。
 それがどんなに残酷なことか」
叔父はかごのオレンジに触れようとして
手を戻す
わたしは母の両手いっぱいにオレンジがぶら下がっている姿を想像する
どの実にも種はない

日曜日
窓の外から近所の子たちの遊ぶ声がきこえる
いつもの海賊遊び
行かないで! と
エミリーが叫んでる

叔父の手はまだテーブルの上にある
何かを掴もうと
さまよってる右手

わたしは壁の時計を見る
「遊びに行きたいのか?」と叔父が言う

ミシガン




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