鎌倉のこと/渡邉建志
てくださーい、と前の人から渡される。Aちゃんがそれを受け取って、ねえいまの人、女優のIさんだった、という。よく見たら(見るべきなのか)そうで、しかし最近見ない人をよくそんな一瞬でわかるよね、と驚く。声で分かったんだという。そんなものかとおもう。娘さんが二人いてかわいかった。
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バスに乗った。Aちゃんの家のよこを通って、でっかいスーパーの地下のフードコートみたいなところでソフトドリンクを飲みながらたわいのない話をした。おもにAちゃんの結婚生活について。結婚したことのないわたしはいろいろびっくりした。結婚はしておこうとおもって、といっていた。そうなんだろうなあ、と思った。味方ができるということ、帰る場所があるということ、なのだ、と聞いて、それはそうなんだろうなあ、と思った。
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