美香/「Y」
 
かを、瞬時に嗅ぎとるんですよ。第六感ってやつですね」
 美香の表情には既に、彼女が昨晩見せた当惑は浮かんでいない。強い目で、昌のことを見つめている。
「ねえ。パビリオンに遊びに来てよ。私たち、きっと合うから」
 部屋を出る間際に、美香が昌に向かって言い、ウインクしながら、小さくて光るものを投げて寄越した。昌は反射的に右手を出し、それを受け取る。
 部屋が静かになった。
 昌はゆっくりと右の掌を開き、受け取ったものを見る。
 美香の小指だった。
 白くて小さな小指。ピンクとパールのネイル・アートが施されている。
 根元から、細いコードが顔を覗かせていた。
 昌は、すこし首を傾げ、身じろぎもせずにその小指を見つめていた。(了)
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