夢の部屋 /服部 剛
ある夜の夢の中で
誰かの拳が
木のドアをノックする
乾いた音が部屋に響く
テーブルの向かいに座った
瞳の澄んだその人は
(私はいつも共にいる・・・)
と言ってすぅっと、消えた
目が、覚めた。
すでに台所に立つ妻が
まな板に置いた野菜を
とんとん刻む音が聞こえる
*
今日という一日の中に
必ずやって来るという
夢の人
毎日会う人の背後に
初めて会う人の背後に
透き通った面影で
姿を重ねている
日々、目の前に現れる隣人の
瞳の奥から聞こえてくる
夢の中のあの声が――
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