【 暗渠 】/泡沫恋歌
て
自分たちの行く末を占っていた
冬になると
鉛色の天上から降ってくる
雪の妖精たちが優しく愛撫して
水の中に静かに溶けていった
小川にはメダカやタニシ
そんなものたちが
流れの中に息づいていたのだ
いつの間にか
地下に埋葬された小さな川
人々が歩く生活道路の下を
水が流れていることなんて
とっくの昔に忘れ去られていた
地上の汚物を呑み込んで
地下に押し流してくれている
暗渠の存在に誰も感謝などしない
反駁する余地もなく
卑しめられた暗渠の黒い水
それでも 閉塞した世界から
早く抜けだしたいと
光を求めて 求めて
水路の中を流れて行く
やがて海へと押しだされた水
結局 そこしか出口がないのだ
光りが見えた瞬間に
暗渠の水は海水に交じった
それは解放ではなく
「融合」という名の消滅だった――
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