【 暗渠 】/泡沫恋歌
 
地下に埋設された暗渠の中には
一条の光も届かない
真っ暗闇の水路を
とうとうと水は流れていく

行くあても知らず
後ろから後ろから 押しだされて
暗渠の中を盲目的に進む水
ここから抜けだしたいと
水は叫ぶ
もっと光をください!

その暗渠は
かつては町を流れる小川であった

春になれば
川べりに植えられた桜の枝が散らす
薄桃色の花びらを浮かべて
ゆるやか流れていた

夏がくると
灼熱の太陽がギラギラ眩しい
水遊びをする子どもたちの歓声が聴こえ
小さな足と無邪気に戯れる

秋がくれば
幸せそうに肩を寄せ合う恋人たちが
川面にそっと笹舟を浮かべて
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