黴/榊 慧
 
とその線は腐食することもある、腐食するということは新たな生命が生まれて育まれいずれ海にいって海になる、秩序、秩序、「誰でもない俺」→は入れないその黴の海、バラの様子を伺い葡萄の木と会話する人々、素読する和綴じの本、祖母は恨んでいた。
 
 憎いだけで行動するけもの。けもの。けもののにく「獣の肉」獣のにく、かたまり、塊、あ、あ、苺のワイン、誰でもない者の薔薇、万歳、万歳ツェラン!"Die Niemandsrose"
 悔しくて苦しくてあの人に悲しくてわたせないこの紙幣をただ歌うよ。あの人は夢をみるから苦しくてそれが俺は悔しくて悲しいそれすらも紙幣になり燃やされる羽根になる愛してる跳んでいく肢、消せないものはあるのですか。

 愛してる、噂さえ罪はなくて、みずうみはなくて、歌はなくて、鳥が死んで、瓶のシロップは傾いて牛乳に入る動きの愛してるっていう動詞、流れ、てく、て、く、て。

 やめたいと言った。この口は動いた。愛は埋められた。「生えろ。」
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