器官なき身体の覚書2/イリヤ
おらず、野生の多様体に飼いならされた一個人しか見いだしえないのではないか。精神分析がひたすらオイディプス的言表を選別してきたことだけを非難したいのではない。オイディプス的な言表を用いて、患者に、人称的•個人的な言表を保持しながらみずからの名前において語っていると、信じこませてしまう点をである。だがそれも罠である、“狼男”は決して語ることができないのだから。なぜならどのような鳴き声にさえ、フロイトは「それはパパだ」と答える。ーしかし、狼男のうちで言表を生産していた機械状アレンジメントが明るみにだされたときにはじめて、狼男は自分の名前において語ることができるのに。“狼男”は「六匹か七匹の狼なんです!」と叫ぶ、フロイトは応じる、「子やぎのことかな?それは面白い、子やぎたちをのけると狼が一匹のこる、それは君のパパさ」と続ける、狼男は疲れ果て器官なき身体におけるリビドー的なものすべてとともに眠りにつく。間もなく、戦争がくる。それは自己を取り戻す奪還戦争である。そのとき、“狼男”たちはそのようにして、喉をつまらせたまま。
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