器官なき身体の覚書/イリヤ
いや、無意識それ自体が群れであることを聴きとれなかった。「ユングは、驚いて、(…中略…)一つだけだったのではない、と彼に指摘した。だがフロイトは続けた……」(ベネット)。“狼男”の夢のなかの群れとは、ほんらい生殖行為への還元を受けず、私たち“狼男”をある一定の様態に“かかわらせる”器官なき身体における何かである。それは環としての皮膚、裏返った靴下、あらゆる現象の表面に留まるマチエール。器官なき身体とは空虚な身体のことではない。あらゆる器官が群れの現象にしたがい、現象自体のうえに散乱するような一身体のことである。満たされた砂漠。器官(オルガン)に対立するのではなく、有機体(オルガニスム)を構成する組織化(オルガザシオン)に対立するのである。表皮の積分(インテグラル)、マチエールの集落。そして無意識の問題は?生殖などとは関係なく、身体のうえで世界的な集団にかかわる移民に関係しているのだ。充溢した身体にのこされた解釈は、それ自体に関係づけられた多様体がみちみちているだけである。
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