思ひつく儘 自意識/……とある蛙
蜘蛛の糸で宙吊りにされた意識が
朦朧として微風に揺れる
埃だらけの部屋の片隅に
宙吊りにされた自意識
窓枠は皹割れ
硝子に結露は無いが曇つてゐる
窓から差し込む悲劇は
眼球からの映像として焦点を結ぶが
認識すべき視神経の接合部分(シナップス)に
アルカロイド系の過去が
不気味な粘菌となって
へばりついてゐる
判断ではなく断定
言葉にするのもおぞましく
何を言つても修飾語の洪水で
脳内の過剰な放電によつて
発作状態に陥り
白目を剥いて泡吹き出す
蜘蛛の糸に宙吊りにされた意識が
置き去りにされた肉体を
眺めてゐる
ただ眺めてゐる。
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