ファ/かぐ
 
ドと
ミと
ファが
雪と一緒に降り出した

見上げた頬に
ドが落ちて
懐かしい匂いがする

ふるさとの無人駅で貰った
ミルク味の飴玉
柔らかくて甘い

右手を差し出すと
ミが落ちた
母猫の舌が
舐めたみたいに
手のひらに痛みを残した

まな板の上で金魚
泣いてなかったから

コートから手袋を取り出す
歩こうか
ずっと我慢してたから
今夜は積もりそう

巻き直すマフラーの隙間
ファがこぼれ落ちて
首筋の上
溶けて消える

階段の踊り場で
一度だけ目が合った
始業のベルが鳴って
期末試験

解答用紙の余白に描いた
怪獣の落書き
先生は花丸でぐるぐるぐると
丸を付けて下さった
怪獣の顔を塗り潰してまで

降り積もったドとミとファを
雪と一緒に踏み鳴らすと
もう何も感じないから
こんな音を聴くのは
私が初めて
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