正義の味方 /服部 剛
 
ふいに巻き起こる北風に 
働くおばさんの手にした 
書類は飛ばされ 
ガードレールの下から 
川へと落ちそうなその時 

ほっ!と短い足が出て 
サラリーマンの
きらりと光る革靴から 
拾い上げておばさんに手渡す 
頭の薄いおじさんは、正義の味方 

ウルトラマンのように 
空の上から飛んでくる 
ヒーローなんぞには 
そうそうなれるものではないが 

短い足をほっ!と出す 
あのおじさんみたいに 
何の変哲もない、正義の味方なら 

この街をゆく群衆の 
あちらこちらに隠れている気がして 
なんだか少しほっとした僕の口から 
白い吐息が、宙に昇った 







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