冬ざれの朝、光の生え際/あ。
部屋の東側にある窓の向こうから
そろりそろりと気配を感じた
冷たい空気にかき回されて
輪郭はひどくぼんやりとしている
わからないけど
生え際にだって届きそうな気がした
ベランダで育てていた栽培キットのハーブは
もうとうに収穫を終えてしまって
プラスチックの鉢だけが並んでいる
いつかの雨水が溜まった底は
朝だけ薄氷が張り
指で触れるとくらげのように泳ぐ
そんな冬ざれの、朝
輪郭はどんどんくっきりとしてくる
泳いでいた氷はいつの間にか溶けて
再び濁った水に戻り
じきに流されるであろう、その時を待つ
太陽が全身を高く掲げて姿を見せた
もう生え際に手は届かない
陰鬱も寂寥も控えめな熱に溶かされて
何処かをそよそよと流れている
そしてやがて、
忘れていく、時間
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