【 詩的恋愛論 】/泡沫恋歌
 
「もう、この恋は終わらせてしまう方が良いかも知れない」
 男との電話を切った後で、黎子はそう感じた。なんとなく空々しい会話が鼻についてきた。
 しゃべっていて、話が長くなってきた時に、ふいに言葉を遮ったり、話す前に次の予定を話して段取りよく会話を終わらせようとしていたり、忙しいとか、疲れたとか……そんな愚痴や体調不調を相手に訴えだしたら――もう潮時なのだ。
 わたしの声が聴きたくて掛けてきた電話ではなく。義務感みたいなものか、単なるご機嫌伺いでしかないのだから。

 ――別れたって構わない。

 そう黎子は思っていた。旬は過ぎた、この恋はもう枯れようとしている。芳しい香りが残っている
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